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物販事業者の知財相談で感じる「一番もったいない失敗」―売れてからでは遅い知財対策

物販事業者の知財相談を受けていると、

「もう少し早く相談してくれていれば……」

と思うことがあります。

その中でも特にもったいないと感じるのが、

商品が売れてから知的財産を考え始めること

です。

商品を作った段階では、

「まだ売れるか分からない」
「知財にお金をかけるのは売れてからでいい」
「まずAmazonやクラウドファンディングに出して反応を見よう」

と考える気持ちはよく分かります。

ところが皮肉なことに、商品が売れ始めた瞬間に、商標権や意匠権などの知的財産権が最も必要になってきます。

今回は、物販事業者の知財相談を受けていて私が感じる、**「一番もったいない失敗」**についてお話しします。

一番もったいないのは「売れてから守ろうとすること」

例えば、オリジナルの商品を販売したとします。

最初はそれほど売れなかったものの、SNSやAmazonなどで徐々に評価され、売上が伸びてきた。

すると、その商品を見た他社が、

似たような商品を販売し始める

ことがあります。

特にOEM商品や中国輸入の商品では、このような相談は珍しくありません。

自分が時間とお金をかけて、

商品を企画し、
デザインを考え、
メーカーと打ち合わせをし、
写真を撮影し、
広告を出し、
レビューを積み上げた。

ようやく売れるようになったところで、似た商品が安く販売される。

結果として、自分が作った市場なのに売上を奪われてしまう。

非常にもったいない話です。

販売前に意匠権を取っていれば守れた可能性もある

特に、商品の外観に特徴がある場合には、意匠登録を検討する価値があります。

例えば、

  • 独特なボトルの形
  • バッグの特徴的な形状
  • 家電製品のデザイン
  • 容器やケース
  • 日用品の特徴的な外観

などです。

販売前に意匠登録出願をしておけば、そのデザインと同一・類似する商品に対して、意匠権を使って対応できる可能性があります。

ところが、何も権利を取らずに販売し、模倣商品が市場に出てから、

「今から意匠登録できませんか?」

と相談されることがあります。

この段階では、かなり話が難しくなることがあります。

「新規性喪失の例外があるから大丈夫」とは限らない

自社が先に商品を公開してしまった場合でも、一定の条件を満たせば、意匠の新規性喪失の例外を利用できる場合があります。

しかし、

「公開してから一定期間内なら、いつ出願しても大丈夫」

という制度ではありません。

自社の商品公開後、出願する前に第三者による同一・類似デザインの公開や出願などが入ると、権利化に影響することがあります。

模倣品がすでに市場にたくさん出てからでは、事情がさらに複雑になります。

ですから、私は基本的に、

例外制度を当てにして先に販売するのではなく、できるだけ販売・公開前に出願する

ことをおすすめしています。

逆の失敗もある―調査せずに販売して止められる

もう一つ、物販で非常にもったいないのが逆のケースです。

つまり、

自分の権利を取っていなかった問題ではなく、他人の権利を調べていなかった問題

です。

商品を仕入れる。

あるいはOEMで商品を作る。

ブランド名を決める。

Amazonなどへ出品する。

広告費をかけて販売を開始する。

在庫もかなり積んだ。

その後突然、

「知的財産権を侵害しています」

という申告を受ける。

そしてECモールで商品ページが停止される。

このようなケースもあります。

販売停止になるとダメージが大きい

販売開始前なら、

  • ブランド名を変更する
  • 商品デザインを変える
  • 仕入れる商品を変更する
  • メーカーに仕様変更を依頼する

という選択肢があります。

しかし、販売開始後では事情が違います。

すでに、

在庫を抱えている。
パッケージを作っている。
商品ページを作っている。
広告費を使っている。
レビューが付いている。

という状態だからです。

そこから名前や商品を変更するとなると、非常に大きなコストがかかります。

だからこそ、

「権利を取るための調査」だけでなく、「他人の権利を侵害していないかを確認する調査」

も重要です。

規模が大きくなるほど事前調査をする企業が多い

私の経験では、ある程度規模が大きくなっている事業者ほど、

「この商品を販売して問題ないか」

「このブランド名を使えるか」

「このデザインで大丈夫か」

ということを販売前に確認する傾向があります。

もちろん、物販を始めたばかりの方が、すべての商品について大規模な知財調査をするのは現実的ではないかもしれません。

ただ、

これから主力商品として大きく販売する商品

や、

かなりの在庫・広告費を投入する商品

については、販売前に一度知財面を確認する意味は大きいと思います。

物販なら、まずブランド名の商標を考える

物販事業で比較的優先度が高いのが商標です。

ブランド名を決めたら、できるだけ早い段階で先行商標を確認します。

Amazonなどでは、一度ブランドが育つと、

商品ページ、
レビュー、
広告、
パッケージ、
SNS、

など、さまざまなところにブランド名が蓄積していきます。

そこまで育ててから、

「このブランド名は他人の登録商標に近いので変更してください」

となると大変です。

ですから、ブランド名を決める段階で調査することが大切です。

食品・サプリメントなどは「商品名」も重要

食品やサプリメントなどでは、会社全体のブランド名だけでなく、

個別の商品名そのもの

が消費者に認識されることがあります。

ヒット商品になると、その商品名に信用や口コミが蓄積していきます。

そのため、

「会社のブランドは商標登録しているから大丈夫」

というだけではなく、重要な商品については商品名の商標登録も検討する価値があります。

売れてから同じような名称の商品を出されるより、早い段階で守っておく方が安全です。

OEM商品なら意匠登録も検討する

中国などの工場から既製品をそのまま仕入れている場合、その外観について日本で新しく意匠登録するのは難しいことがあります。

すでに公開されているデザインだからです。

一方で、

工場と相談して形状を変更した、
独自の外観を作った、
自社専用の商品デザインにした、

というOEM商品であれば、意匠登録を検討する価値があります。

特に、

「この見た目だから売れる」

という商品では、意匠権との相性が良い場合があります。

技術的な工夫があるなら特許も候補になる

物販商品では、商標や意匠と比べると特許を使う場面は少ないかもしれません。

ただし、

  • 独自の構造
  • 新しい機能
  • 商品内部の仕組み
  • 従来品の問題を解決する技術的な工夫

がある場合には、特許を検討する価値があります。

特許と意匠では、守る対象が違います。

意匠は、基本的に外観・デザインを守る制度です。

一方、特許では、発明の技術的特徴を文章、つまり特許請求の範囲によって表現します。

そのため、うまく権利化できれば、

外観を少し変えただけでは回避できない権利

を作れる場合があります。

もちろん、特許であれば必ず意匠より広いわけではありません。

実際の権利範囲は、発明の内容や先行技術、特許請求の範囲によって変わります。

ただ、技術的に特徴のある商品については、

意匠だけでなく特許という選択肢もある

ことは知っておいてよいと思います。

商標・意匠・特許は役割が違う

物販商品を守るときには、それぞれ役割が違います。

商標
ブランド名・商品名などを守る。

意匠
商品の特徴的な外観・デザインを守る。

特許
商品の構造・機能・技術的な仕組みを守る。

すべての商品について3つ全部を取る必要があるわけではありません。

商品の特徴を見て、

何を守るのが一番効果的なのか

を考えることが重要です。

「売れるか分からないのに知財費用をかけるの?」という問題

ここは物販事業者にとって現実的な問題だと思います。

販売前の段階で、

「本当に売れるかどうか分からない商品に、商標や意匠の費用をかけるのは怖い」

という考え方は理解できます。

だからといって、

すべての知財対策を売れてからにする

のもリスクがあります。

大切なのは、商品ごとに優先順位を付けることです。

例えば、

ブランド名は長く使う予定だから商標を取る。

独自デザインの商品だけ意匠を検討する。

構造に大きな技術的特徴がある主力商品だけ特許を検討する。

というやり方があります。

まず「公開・販売前に一度確認する」だけでも違う

私は、物販事業者が販売前に必ず大量の費用をかけて知財権を取得しなければならないとは考えていません。

ただ、

商品名や商品仕様が固まった段階で、一度知財を確認する

ことは非常に重要だと思います。

例えば、

「商標だけは今取っておいた方がいい」

「このデザインなら意匠を出した方がいい」

「これは既製品なので意匠は難しい」

「この商品には特許を検討できる技術があります」

「この商品は他人の権利を確認してから販売した方がいい」

といった判断ができます。

販売してからではなく、販売前に選択肢を知ることに意味があります。

私が「一番もったいない」と感じる瞬間

相談を受けていて特にもったいないと感じるのは、

「この商品、かなり売れたんです。でも真似されてしまいました。何とかなりませんか?」

という相談です。

売れているということは、それだけ事業として価値がある商品です。

だからこそ、本当は売れる前に権利を考えておく価値があった商品だったともいえます。

また逆に、

「かなり在庫を入れたのに、他人の権利を理由に販売できなくなりました」

というケースも非常にもったいないと思います。

この2つは正反対に見えますが、原因は似ています。

どちらも、

「販売・公開する前に知財を確認していなかった」

という点です。

まとめ:売れた後ではなく、売る前に一度知財を考える

物販事業者にとって、最も大切なのは商品を売ることです。

知財権を取ること自体が目的ではありません。

しかし、

売れた商品を守るためにも、安心して販売するためにも、知的財産は重要です。

特に、

  • ブランド名を決めたとき
  • OEM商品のデザインが固まったとき
  • 新商品の仕様が決まったとき
  • Amazonへの出品を予定しているとき
  • Makuakeなどで公開する前

といった段階で、一度知財を確認することをおすすめします。

すべての権利を取る必要はありません。

ただ、

商標を取るべきか。
意匠を取るべきか。
特許まで検討すべきか。
他人の権利を調査した方がよいか。

これを販売前に考えておくだけでも、その後のリスクはかなり変わります。

私が物販事業者の知財相談を受けていて感じる「一番もったいない失敗」は、

売れてから初めて知財を考えることです。

商品が売れる前だからこそ、取れる選択肢があります。

遠山総合特許事務所では、

「Amazonでこれから商品を販売したい」
「中国OEM商品の知財を確認したい」
「この商品デザインは意匠登録できるか」
「ブランド名を商標登録したい」
「新商品に特許になる技術があるか知りたい」
「販売前に他人の知的財産権を確認したい」

といった段階からご相談いただけます。

商品を販売してから問題が起きて対応するより、販売前に一度確認しておく方が、結果として費用も時間も抑えられる場合があります。

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執筆・監修:弁理士 遠山敬一

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