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Amazonで自社ブランドの商品を販売していると、
「知らない出品者が相乗りしてきた」
「自社の商品ページで別の商品が販売されている」
「ブランド名を勝手に使われている」
といったことが起こることがあります。
そのとき、
「商標権侵害でAmazonに申告すれば、すぐ排除できるのでは?」
と考える方もいるでしょう。
Amazon Brand Registryには、疑われる知的財産権侵害を報告するための仕組みが用意されています。Amazon自身も、正確な侵害報告がブランド保護につながると案内しています。
ただし、ここで重要なのは、
Amazonのシステム上で申告が受け付けられることと、法律上、本当に商標権侵害が成立することは別
という点です。
今回は、Amazonで商標権侵害を申し立てる前に確認しておきたいポイントを解説します。

最初に確認したいのは、自分が持っている商標権の範囲です。
商標権侵害を考えるときには、
を確認する必要があります。
つまり、
「自分はこのブランド名を商標登録している」
だけでは十分ではありません。
何について登録しているのかが重要です。
Amazon物販では、ここが実務上大きな違いになることがあります。
例えば、バッグを販売している場合、
バッグそのものを指定商品として取得した商標権
と、
第35類(小売)について取得した商標権
では、権利の対象が異なります。
私の実務経験では、商品そのものをカバーする商標権を持っている場合、Amazon上の商標権侵害申告で比較的ストレートに対応されるケースがあります。
一方、第35類(小売)のみの場合には、相手の商品を実際に購入して確認することが必要になったという話を聞くことがあります。
ただし、この点はAmazonの運用変更もあり得るため、
「35類なら必ずテスト購入が必要」
と一般化するのではなく、実際の申告時点のAmazonの運用を確認する必要があります。
Amazonで同じ商品ページに別の出品者が入ってきたからといって、
それだけで直ちに商標権侵害になるわけではありません。
例えば、その出品者が真正品を適法に入手して再販売しているだけ、というケースも考えられます。
一方で、
自社ブランドの商品ページに相乗りしながら、
実際には別の商品を発送している。
商品本体に自社ブランドのロゴが入っているはずなのに、
届いた商品にはロゴがない。
別メーカーの商品なのに、
自社ブランドの商品であるかのように販売している。
という場合には、事情が変わってきます。
重要なのは、
相乗りというAmazon上の状態だけを見るのではなく、相手が実際に何を販売しているのかを見ること
です。
相手の商品が本当に自社商品なのか分からない場合には、テスト購入が重要になることがあります。
例えば、
自社では商品本体にロゴを入れている。
ところが相乗り業者から購入した商品には、そのロゴが入っていない。
パッケージも違う。
商品の仕様も違う。
ということが確認できれば、
「自社ブランドの商品として販売されているが、実際には別の商品が届いた」
という重要な証拠になります。
特に、第35類(小売)の商標権を使ってAmazon上で対応する場合には、このような実物確認が重要になるケースがあると考えています。

Amazonへ申告する前には、できるだけ証拠を残しておくことをおすすめします。
例えば、
などです。
Amazon上の商品ページは変更される可能性があります。
申告後に商品ページや出品内容が変わってしまうと、
「当時どのような状態だったのか」
を後から確認しにくくなる場合があります。
ですから、
申告する前に証拠を残す
というのが基本です。
Amazonブランド登録をしていると、ブランド保護のためのさまざまなツールを利用できます。
Amazonは、Brand Registryの機能として、知的財産権侵害を検出・報告するためのツールを提供しています。Amazon出品
ただし、
Amazonブランド登録をしている=他の出品者を自由に排除できる
という意味ではありません。
Amazon上のルールと、商標法上の権利侵害は別の問題です。
Amazon上では対応されるケースでも、
法律上本当に商標権侵害なのか
については別途検討する必要があります。
ここを混同しないことが非常に重要です。
Amazonでは、権利侵害申告をすると比較的早い段階で相手商品の出品が停止されることがあります。
そのため、
「とりあえず申告して止めてしまえばいい」
と考えてしまうことがあります。
しかし、これはおすすめできません。
なぜなら、実際には商標権侵害ではないのに、
「この商品は当社の商標権を侵害している」
とAmazonへ申告した場合、申告した側が責任を負う可能性があるからです。

2024年3月18日の東京地方裁判所判決では、Amazonに対して行われた商標権侵害の申告が問題となりました。
裁判所は、問題となった商品の販売は商標権侵害に当たらず、それにもかかわらず商標権侵害であるとAmazonへ申告したことについて、不正競争防止法上の「虚偽の事実の告知」に当たると判断しました。裁判所.jp
さらに裁判所は、
競争相手が知的財産権を侵害していると取引先などへ告知する場合には、非侵害品について虚偽の告知をしないよう、十分に調査する注意義務がある
とし、この注意義務は、告知先がAmazonのようなECプラットフォーマーであっても同じだとしています。裁判所.jp
この事件では、出品停止による逸失利益や弁護士費用などを含め、713万7335円の損害が認定されています。裁判所.jp
これはかなり重要なポイントです。
Amazonは裁判所ではありません。
Amazon上で申告が承認され、
相手の出品が止まった。
だから、
「自分の商標権侵害の主張が法律的にも正しかった」
とは限りません。
申告された側から、
「そもそも商標権侵害ではない」
と争われることもあります。
そのとき、
商標自体が類似しているか。
商品が同一・類似しているか。
商標権の効力が及ぶ使用なのか。
真正品の再販売ではないか。
といった点が改めて問題になります。
Amazonで商標権侵害を申し立てる前には、
私は少なくとも、
① 商標が同一・類似か
② 指定商品・役務と相手の商品・役務が同一・類似か
③ 相手が実際に販売している商品は何か
④ 真正品の再販売ではないか
⑤ 申告を裏付ける証拠があるか
を確認することが重要だと思います。
そして、判断が微妙な場合には、
「Amazonで止められるかどうか」ではなく、「法律上、本当に侵害といえるか」
を優先して考えるべきです。
Amazon物販では、ブランド登録のために第35類(小売)を取得するケースがあります。
第35類(小売)は、販売する商品のジャンルがまだ定まっていない初心者には使いやすい区分です。
一方で、
特定の商品を本格的に販売し、
模倣品や相乗りに強く対応したい
という段階になれば、
商品そのものをカバーする商標権
を取得しておく意味が大きくなります。
私自身、Amazon物販では、
第35類(小売)だけで終わらせず、主力商品が決まった段階で商品区分の商標も検討する
という考え方をおすすめしています。
商標登録は、
Amazonブランド登録をするためだけのものではありません。
実際に模倣品や相乗り問題が起きたとき、
どの商品について、どの商標権を持っているか
が非常に重要になります。
ですから、
「ブランド登録できれば何類でもいい」
ではなく、
将来的に、
のであれば、商品区分まで含めて商標戦略を考えることが大切です。
Amazonで相乗りや模倣品を見つけると、
すぐにでも出品を止めたいと思うのは当然です。
しかし、
Amazonで申告できることと、法律上の商標権侵害が成立することは別です。
申告前には、
を確認することが重要です。
特に、
「Amazonなら比較的簡単に止められるから、とりあえず申告する」
という対応は避けた方がよいでしょう。
申告が誤っていた場合には、逆に損害賠償などの問題につながる可能性があります。
遠山総合特許事務所では、
「Amazonで相乗りされた」
「商標権侵害として申告できるか判断してほしい」
「第35類(小売)の商標しか持っていない」
「商品区分の商標も取得した方がよいか」
「模倣品をテスト購入したが、どう対応すればいいか」
「Amazonから知的財産権侵害の通知が来た」
といった段階からご相談いただけます。
Amazon上の運用だけでなく、商標法上、本当に権利侵害といえるかまで確認したうえで対応することが重要です。
Amazonで相乗りされたとき商標権でどこまで対抗できる?
https://toyamapat.com/archives/1792
Amazonブランド登録には商標登録が必要?
https://toyamapat.com/archives/1639
Amazon物販では第35類(小売)だけ取れば大丈夫?
https://toyamapat.com/archives/1645
商品名を決める前に最低限やっておきたい商標調査
https://toyamapat.com/archives/1719
先願商標が見つかったらブランド名を変えるしかない?
https://toyamapat.com/archives/1808
執筆・監修:弁理士 遠山敬一
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