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最近、生成AIの分野で「AIエージェント」という言葉をよく聞くようになりました。
AIエージェントを利用したシステムを開発している方からすると、
「AIエージェントを使ったサービスは特許になるの?」
「ChatGPTなどを使って自動で処理させるだけでも特許になる?」
「AIエージェントのどこを発明として書けばいい?」
といった疑問があると思います。
結論からいうと、AIエージェントを利用したシステムも十分に特許になり得ます。
実際、日本でもAIエージェントを含む情報処理システムについて、すでに複数の特許が成立しています。例えば、利用者のプロンプトを解析し、一定の基準に合わない情報を除外して処理を実行するAIエージェントや、与えられたタスクを分解・評価して処理順序を見直すAIエージェントなどが特許化されています。Google Patents
ただし重要なのは、
「AIエージェントを使っています」だけで特許になるわけではない
という点です。
AIエージェントが何を入力し、何を判断し、どの処理を選択し、どのツールを実行し、結果をどのように評価するのか。
こうした具体的な処理フローやシステム構成に特徴があるかを見る必要があります。

AIエージェントは、単に質問に回答するだけの生成AIとは少し違います。
例えば通常のチャットAIであれば、
「質問を入力する」
↓
「回答を生成する」
という比較的シンプルな処理です。
一方、AIエージェントは、入力された依頼に応じて、
何をすれば目的を達成できるかを判断し、必要な処理やツールを選択して実行する
という使い方をします。
例えば、
「来週の出張について調べて」
という指示を受けたとします。
AIエージェントが、
出張先を確認する
→ 交通情報を検索する
→ ホテルを検索する
→ 料金を比較する
→ 条件に合う候補を選ぶ
→ 結果をまとめる
という複数の処理を行うようなイメージです。
最近成立しているAIエージェント関連特許でも、外部からのプロンプトやセンサー入力などを起点に処理を実行し、必要なタスクを行って結果を出力する構成が記載されています。Google Patents
ここは、私が今回一番重要だと思っているところです。
AIエージェントという言葉を見ると、
「AIエージェントそのものを特許にする」
ようなイメージを持つかもしれません。
しかし、実際には、
AIエージェントはシステムを構成する一つの手段
と考えた方が分かりやすいと思います。
例えば、
入力データを取得する手段があり、
その内容を分析し、
次に実行すべきタスクを決め、
外部ツールやAPIを実行し、
結果を評価し、
必要なら次の処理を行う。
この一連のシステムの中にAIエージェントが入っている、という考え方です。
したがって特許では、
「AIエージェントが処理する」
とブラックボックスのように書くだけではなく、
AIエージェントが具体的に何をしているのか
まで分解して説明することが重要です。
例えば、AIエージェントが営業支援を行うシステムだったとします。
単に、
「AIエージェントが適切な営業方法を判断する」
では、処理内容がよく分かりません。
特許を考えるのであれば、
顧客情報を取得する
↓
過去の購買履歴を分析する
↓
顧客を分類する
↓
分類結果に基づいて営業手段を選択する
↓
メール作成ツールまたは電話システムを選択する
↓
処理を実行する
↓
反応を取得する
↓
反応結果に基づいて次の処理を決定する
というように、具体的な処理へ落とし込んでいきます。
この中のどこに従来技術にはない特徴があるのかを確認します。

AIエージェントを利用したシステムを考える場合、私は基本的に次の処理の流れを見ます。
このどこかに特徴がある場合もありますし、複数の処理の組み合わせ全体に特徴がある場合もあります。
AIエージェント関連の最近の特許でも、プロンプト解析、情報収集、処理実行などを具体的な手段として規定した構成が見られます。Google Patents
また、複数のタスクを評価して重み付けし、タスクの分解方法や処理順序を見直すことで処理精度や速度を高める構成も特許化されています。Google Patents
つまり、AIエージェントが行う判断・処理を具体化することが重要です。
一方で、
「ユーザーが質問する」
↓
「AIエージェントが回答する」
だけでは、発明としての特徴は出しにくいでしょう。
すでにAIエージェント自体は一般的になりつつあります。
そのため、
何を基準に判断するのか
どのタスクを選ぶのか
どのツールを使うのか
実行結果をどう評価するのか
評価結果によって次の処理をどう変えるのか
といった具体的な工夫が必要になります。
特許庁もAI関連発明について、AIだから特別な基準で判断するのではなく、通常の特許と同様、新規性・進歩性・記載要件などの観点から審査するための事例を公開しています。特許庁
AIエージェントは一つとは限りません。
例えば、
「情報収集担当エージェント」
「分析担当エージェント」
「文章作成担当エージェント」
「チェック担当エージェント」
というように、複数のAIエージェントを組み合わせるシステムもあります。
この場合にも、
単に複数のエージェントを並べるだけではなく、
どのエージェントにどのタスクを割り当てるのか
処理順序をどう決めるのか
各エージェントの結果をどう評価するのか
といった点が重要です。
実際に、AIエージェントが使用する情報を効率的に収集するためのシステムや、多数のサービスから処理に適したものを選択する構成についても日本で特許が成立しています。Google Patents
前回の記事では、RAGについて解説しました。
RAGは、簡単にいうと、
外部のデータベースなどから必要な情報を検索し、その情報をLLMへ渡して回答を生成する仕組み
です。
一方、AIエージェントはもう一歩進んで、
「次に何をすべきか」を判断して行動する
ところまで含むことが多いです。
例えば、
RAGなら、
質問
↓
情報検索
↓
LLMへ情報を渡す
↓
回答
という流れです。
AIエージェントなら、
質問
↓
何をすべきか判断
↓
必要なら検索
↓
必要なら外部APIを呼び出す
↓
処理結果を評価
↓
必要なら別処理を実行
↓
最終結果を返す
という流れになります。
ただし、実際のシステムではRAGとAIエージェントを組み合わせることもあります。

特許明細書を書く際にも、
「AIエージェントが判断する」
だけでは十分ではない場合があります。
どの情報を取得し、
どの条件で判断し、
どの処理を選び、
何を実行し、
どの結果を評価するのか。
というところまで説明した方が、発明の内容が明確になります。
これは以前の記事で説明した、
「AIで作ったアプリでも、内部の処理を説明できることが重要」
という話とも共通しています。
AIの部分を完全なブラックボックスにしてしまうと、
「何が発明なのか」
を説明しにくくなります。
AIエージェントを含むシステムについて特許性を検討するときは、私はまず、
「AIエージェントが具体的に何をしているのか」
を分解するのがよいと思います。
例えば、
入力情報の種類
判断に使う情報
タスク選択の基準
外部ツールの選択方法
複数エージェントの役割分担
処理結果の評価方法
再実行の条件
最終出力の作り方
などです。
その中に従来にはない仕組みがあれば、特許化を検討できます。
今回のテーマで一番お伝えしたいことは、ここです。
AIエージェントという新しい言葉を使っているから特許になるわけではありません。
重要なのは、
AIエージェントを含んだシステムが、従来と違う処理をどのように実現しているか
です。
これは生成AIでもRAGでも同じです。
既存の技術を使っていても、
その組み合わせ方、判断方法、処理順序、情報の利用方法などに新しい工夫があり、新規性・進歩性等の要件を満たすのであれば、特許になる可能性があります。
AIエージェントを利用したサービスの場合も、
システムが完全に完成するまで待つ必要はありません。
例えば、
「こういう処理フローにしたい」
という段階でも検討できます。
むしろ、公開してから特許を考えるより、
処理フローがある程度固まった時点
で発明のポイントを確認した方がよいでしょう。
公開前であれば、特許出願の内容を考えながらシステム設計を調整できる場合もあります。
AIエージェントを利用したシステムは、十分に特許になり得ます。
実際、日本でもAIエージェントを具体的な構成要素として規定した特許が成立しています。Google Patents
ただし、
「AIエージェントを使った」
だけでは十分ではありません。
重要なのは、
入力
↓
判断
↓
実行
↓
評価
↓
再判断
↓
出力
という一連の処理を具体的に整理することです。
AIエージェントをブラックボックスとして扱うのではなく、
「このエージェントはシステムの中で何をしているのか」
を明確にする。
その処理構成に新規性・進歩性があれば、特許になる可能性があります。
遠山総合特許事務所では、
「AIエージェントを使ったサービスを開発している」
「複数のAIエージェントを連携させている」
「外部APIやツールを自動選択する仕組みがある」
「RAGとAIエージェントを組み合わせている」
「どこを特許にすればよいか分からない」
といった段階からご相談いただけます。
処理フローを一緒に整理しながら、どこに発明としての特徴があるかを検討します。
RAGを使ったシステムは特許になる?検索・プロンプト・LLM連携のどこが発明になるかを弁理士が解説
https://toyamapat.com/archives/1766
生成AIを使った発明はどこを特許にする?プロンプト・処理・システム構成を弁理士が解説
https://toyamapat.com/archives/1727
AIを使ったサービスは特許になる?生成AI・LLM・AIアプリの特許化を弁理士が解説
https://toyamapat.com/archives/1679
執筆・監修:弁理士 遠山敬一
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