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生成AIを使った発明はどこを特許にする?プロンプト・処理・システム構成を弁理士が解説

生成AIを使ったサービスを開発している方から、

「ChatGPTを使っているだけでも特許になるの?」
「LLMそのものを作っていなくても特許は取れる?」
「生成AIのどの部分を発明として考えればいい?」

と聞かれることがあります。

結論からいうと、生成AIを使った発明でも十分に特許になる可能性があります。

しかも、自社で大規模言語モデルそのものを開発している必要はありません。

ChatGPT、Gemini、Claudeなど、既存の大規模言語モデル(LLM)を利用している場合でも、

  • どのデータを取得するのか
  • そのデータをどう処理するのか
  • どのようなプロンプトを生成するのか
  • LLMにどのように入力するのか
  • 出力結果をどう取得・評価・利用するのか

といった生成AIの前後・周辺の処理構成に工夫があれば、特許化を検討できます。

この記事では、生成AIを使った発明の「どこ」が特許になるのかを、実際の特許取得事例も交えて解説します。



生成AI特許の基本は「入力→処理→出力」

システム系の特許を考える場合、基本となるのは、

入力
→ 処理
→ 出力

という流れです。

生成AIを使ったシステムも同じです。

例えば、シンプルに整理すると、

データを取得する

プロンプトを生成する

LLMへデータとプロンプトを入力する

LLM側で処理・演算を行う

出力結果を取得する

目的に応じて成果物として利用する

という構成になります。

この流れのどこに独自の工夫があるかを見ていくのが、生成AI特許を考えるうえで非常に重要です。


1.まずは「どんなデータを取得するか」

最初に考えるのが、入力側です。

生成AIに何か処理をさせるためには、基本的に何らかのデータが必要です。

例えば、

  • ユーザーが入力した文章
  • 顧客情報
  • 商品情報
  • 社内データ
  • 画像
  • 音声
  • 過去の文章
  • Web上から取得した情報

などです。

ここで、

「どのデータを取得するのか」

自体に工夫がある場合もあります。

また、単にデータを取得するだけでなく、

  • 必要な情報だけを抽出する
  • 複数のデータを組み合わせる
  • 特定条件で選別する
  • LLMに渡しやすい形に加工する

といった前処理も発明のポイントになり得ます。


2.生成AI特許では「プロンプト生成」が重要なポイントになる

次に重要なのがプロンプトです。

ChatGPTやGemini、ClaudeなどのLLMでは、

どのようなプロンプトを入力するか

によって結果が大きく変わります。

そのため、

「プロンプトを使っています」

だけではなく、

どのような条件で、どのようなプロンプトを生成するのか

に工夫がある場合、特許として検討できる可能性があります。

例えば、

  • ユーザーの入力内容に応じてプロンプトを変える
  • 過去の出力内容を次のプロンプトに反映する
  • 複数のデータからプロンプトを自動生成する
  • 条件に応じてプロンプトの構造を変更する
  • AIの出力結果を見て再度プロンプトを生成する

といった処理です。

つまり、固定された一文のプロンプトそのものだけを見るのではなく、プロンプトを作る仕組み全体を見ることが大切です。



3.LLMとのインターフェースもシステム構成の一部

次に、大規模言語モデルとの接続部分です。

システム側から、

  • データ
  • プロンプト
  • その他必要な情報

をLLMへ送信し、LLM側で処理された結果を受け取ります。

この部分を、この記事では分かりやすくLLMとのインターフェースと呼びます。

LLMそのものはChatGPTやGeminiなど既存のサービスであっても構いません。

重要なのは、

「既存のLLMを、自分のシステムの中でどう使うか」

です。

例えば、

  • 複数回LLMを呼び出す
  • 1回目の出力を2回目の入力へ使う
  • 別のデータベースと組み合わせる
  • 条件によって異なるLLMを使い分ける
  • 出力内容を評価して再度LLMへ入力する

といった構成にも工夫の余地があります。


4.出力をどう利用するかも発明のポイントになる

LLMから回答が返ってきたら終わり、とは限りません。

実際のサービスでは、その出力をさらに、

  • 評価する
  • 修正する
  • 選別する
  • 別の形式へ変換する
  • 別の処理へ引き渡す
  • ユーザーに最適化する

といった処理を行うことがあります。

この出力後の処理にも特徴があれば、発明のポイントになり得ます。

生成AIを使った特許では、

LLMの前だけでなく、LLMの後まで含めてシステム全体を見る

のが重要です。


LLMそのものを作っていなくても特許になる

ここは、よく誤解されるところです。

「ChatGPTを使っているだけだから特許にはならない」

と考える方がいます。

しかし、必ずしもそうではありません。

もちろん、

単にChatGPTに質問を送って、その回答をそのまま表示するだけ

であれば、独自の発明としては弱いでしょう。

一方で、

  • 入力データの取得方法
  • データの加工方法
  • プロンプト生成方法
  • LLMへの入力方法
  • 出力結果の評価
  • 再生成の方法
  • 成果物への変換

などに新しい処理構成があれば、特許になる可能性があります。

つまり、生成AI特許で重要なのは、

「どのAIを使っているか」ではなく、「そのAIをどう使って課題を解決しているか」

です。


実例:長文の整合性を保つ「文章生成装置」

当事務所で実際に特許取得をサポートした案件に、**生成AIを使った「文章生成装置」**があります。

この発明も、ChatGPTやGeminiなどの大規模言語モデルそのものを新しく作ったわけではありません。

ポイントは、その使い方にあります。

長文を一気に作ると整合性が崩れる

生成AIで章立てされた長文を作ろうとすると、従来は一貫性が崩れることがありました。

例えば、

第1章では主人公が「太郎・次郎」だったのに、

第2章・第3章と進むうちに、

「三郎・次郎」

になってしまったり、

後半では人物設定そのものが変わってしまったりすることがあります。

長文になるほど、

  • 人物名
  • 設定
  • ストーリー
  • 文脈

の整合性が崩れやすくなるという問題です。


前の章の出力を、次の章のプロンプトに取り込む

そこで、この発明では、

まずテーマや章立てなどのデータを用意します。

そして、

第1章を生成

第1章の出力文章を取得

その文章を第2章を作るためのプロンプトへ取り込む

第2章を生成

第1章・第2章までの内容を次の生成へ反映する

というように、順番に処理します。

前の章の出力を次の章のプロンプトに取り込むことで、

それまでの文脈を維持しながら続きの文章を生成する

という仕組みです。

これによって、

  • 登場人物の名称
  • 設定
  • ストーリー
  • 前後の文脈

などの整合性を保ちやすくなります。



この発明では「プロンプト周辺」が特許のポイント

この事例を見ると、

「生成AIそのものを開発しなくても特許になる」

ということが分かりやすいと思います。

発明のポイントは、

前に生成した文章を、次の文章生成用のプロンプトに反映するという処理構成

です。

つまり、

データ取得

プロンプト生成

LLMで文章生成

出力取得

次のプロンプトへ反映

という仕組みそのものが重要です。

このように、プロンプトやその周辺処理をきちんとシステム構成として整理することで、生成AIを利用した発明でも特許を取得できる可能性があります。


生成AI特許では「課題」と「処理」を結び付ける

ただし、

プロンプトを工夫したら何でも特許になる

という意味ではありません。

特許にするためには、その処理によってどのような課題を解決しているのかを明確にする必要があります。

例えば今回の文章生成装置なら、

課題
長文生成では章をまたいだ整合性が崩れやすい

という問題があり、

解決手段
前章までの出力を次章用のプロンプトに取り込む

という処理によって、

効果
長文全体の整合性を保ちやすくする

という関係になっています。

この、

課題 → 解決手段 → 効果

を明確に説明することが重要です。

そして、その処理構成について新規性・進歩性などの特許要件を満たす必要があります。


生成AI発明で特許になり得るポイント

生成AIを利用したシステムでは、例えば次のような部分を確認します。

入力側

  • どのデータを集めるか
  • どう選別するか
  • どう前処理するか

プロンプト側

  • どんな条件で生成するか
  • 何をプロンプトに含めるか
  • 過去の出力をどう利用するか

LLMとの連携

  • 何回処理するか
  • 複数AIをどう使い分けるか
  • 外部データベースとどう連携するか

出力側

  • 結果をどう評価するか
  • 再生成するか
  • どのように成果物へ変換するか

生成AI特許では、LLMそのものよりも、こうした周辺の処理に発明の種があることが多いと考えています。


RAGやAIエージェントも同じ考え方

この考え方は、生成AI単体だけではありません。

例えばRAGでは、

データを検索

必要な情報を選択

プロンプトに組み込む

LLMへ入力

回答を生成

という流れがあります。

AIエージェントであれば、

  • 状況を判断する
  • 使用するツールを選択する
  • 外部システムを操作する
  • 結果を再評価する

といった処理があります。

このようなところにも発明のポイントが生まれます。


出願するならサービス公開前に検討する

生成AIを使ったサービスを作っている場合は、できれば公開前に一度特許性を検討することをおすすめします。

例えば、

  • Webサービス公開
  • アプリ公開
  • 展示会
  • プレスリリース
  • SNS
  • 営業資料

などでシステムの仕組みを公開すると、特許の新規性に影響する可能性があります。

そのため、

システム構成がある程度固まった段階

で一度、

「どこを特許にできそうか」

を整理しておくのがよいでしょう。


まとめ:生成AI特許は「LLMの周り」を見る

生成AIを使った発明では、

ChatGPTやGeminiそのものを発明する必要はありません。

重要なのは、

  • データをどう取得するか
  • どう処理するか
  • どのようなプロンプトを作るか
  • LLMとどう連携するか
  • 出力をどう取得・評価・利用するか

という生成AIの周辺処理です。

今回紹介した文章生成装置のように、

前の出力を次のプロンプトへ取り込む

という処理構成でも、それによって新しい課題を解決し、新規性・進歩性等の要件を満たせば、特許になる可能性があります。

生成AIサービスを開発している方は、

「AIを使っているだけだから特許にならない」

と最初から決めつけず、

システムのどこに独自の処理があるのか

を一度整理してみることをおすすめします。

遠山総合特許事務所では、

  • ChatGPT・Gemini・Claudeを使ったサービス
  • プロンプト生成技術
  • RAG
  • AIエージェント
  • 生成AIを使ったアプリ・SaaS
  • AIを組み込んだ業務システム

などについて、特許化できるポイントの検討からご相談いただけます。

システム全体の処理フローを確認しながら、どの部分を発明として押さえるべきかをご提案します。

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執筆・監修:弁理士 遠山敬一

https://toyamapat.com/about

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