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商標登録は、会社を経営するうえで必ずしなければならない手続ではありません。
商標登録をしなくても、
などを使って事業をすること自体はできます。
そのため、
「まだ売れるか分からないから、商標は後でいい」
「ずっとこの名前を使っているから大丈夫だろう」
「自分で考えた名前だから、自分のものだと思っていた」
という方も少なくありません。
しかし、商標登録をしないまま名前を使い続けると、後から大きな問題になることがあります。
私が実際に相談を受けてきた中でも、
「先に取っておけばよかった」
というケースは何度もあります。
この記事では、商標登録をしないことで起こり得る代表的な5つのリスクを、実際の相談事例をもとに解説します。

商標で最も気をつけたいのが、他人に先に登録されるリスクです。
日本の商標制度は、原則として先に出願した人が優先される「先願主義」を採用しています。
つまり、
「自分の方が先に使っていた」
というだけでは、必ずしも自分が商標権を取得できるわけではありません。
あるケースでは、本人はその言葉を業界内で広く使われている一般的な表現だと思い、講座名や情報発信の中で長く使っていました。
ところが、後になって、その言葉について他社が商標権を取得していることが分かりました。
そして、
「その名称を使わないでください」
という警告を受けました。
結果として、
といった対応が必要になりました。
長期間使ってきた名前ほど、変更の影響は大きくなります。
だからこそ、
使い始める前、遅くとも本格的に広げる前に商標を確認する
ことが重要です。
これは意外と知られていないリスクです。
自分が考えた名前でも、広まりすぎることで商標登録が難しくなる場合があります。
例えば、ヨガやピラティスなどで独自のメソッドを考案したとします。
そのメソッドを、講師養成講座を開催して受講生に教え、その方々が認定講師となり、
「○○メソッドを教えています!」
という形でSNSやブログなどで情報発信を続けたとします。
最初のうちは、考案者本人のメソッド名だったとしても、それが業界内で広く使われるようになると、
「特定の一人のサービスを表す名前」ではなく、一般的な方法の名称
のように見られる可能性があります。
数年経ってから本人が商標を取ろうとしたところ、
識別力が弱い名称になってしまっている
という問題が出ることがあります。
実際、私が扱った案件でも、広まりすぎた名称について商標登録を試みたものの、難しい状況になったケースがありました。
皮肉なことですが、
自分のメソッドが広く知られるようになったことが、商標登録の足かせになる
こともあるのです。
商標は、名前が有名になってから取ればよいとは限りません。
むしろ、
名前を広める前に取っておく
方が安全です。

商標問題が特に大きな負担になりやすいのが、実店舗です。
例えば、
などです。
ある日突然、
「その店舗名は当社の登録商標に似ています。使用をやめてください」
という警告書が届くことがあります。
実店舗の場合、名称を変えるだけでも簡単ではありません。
など、さまざまな場所を変更する必要があります。
長く営業していればいるほど、その負担は大きくなります。
ある案件では、相手の登録商標を避けるために店舗名を少し変更し、新しい名称で商標出願を行いました。
しかし、その名称についても、
相手の商標と類似している
として拒絶理由通知が来ました。
そこで、さらに言葉を加えて全体として異なる名称にし、再度権利化を目指しました。
それでも最初の審査では認められず、最終的には拒絶査定不服審判まで争って登録に至ったケースがあります。
最初に商標調査をして名称を決めていれば、ここまで複雑な対応をする必要はなかったかもしれません。
商標権侵害の問題では、
「名前を変えてください」
と言われるだけではありません。
ケースによっては、
「これまで商標を使用してきた分について、ライセンス料を支払ってください」
と請求されることもあります。
もちろん、実際に支払い義務が生じるかどうかは、
など、個別に判断する必要があります。
しかし、商標権を持つ相手から警告を受けるだけでも、事業者にとっては大きな負担です。
弁護士・弁理士への相談費用も必要になりますし、事業を続けながら対応しなければなりません。
「商標を取る費用を節約したつもりが、後からもっと大きな費用がかかった」
ということにもなりかねません。
最近では、
などを、事業そのものとして売却するケースも増えています。
そのときに重要になるのが、ブランドの権利関係が整理されているかです。
買い手側からすれば、
「このブランド名は本当に安心して使い続けられるのか」
という点は非常に重要です。
もし商標登録されていなければ、
というリスクを引き継ぐことになります。
一方、商標権をきちんと取得していれば、
ブランドを構成する知的財産として評価しやすくなります。
必ず売却額が上がると断定できるものではありませんが、商標権があることで、ブランド資産として評価されやすくなり、買い手にとっても安心材料になります。
将来的に事業売却まで考えているのであれば、商標登録は重要な準備の一つです。

もう一つ重要なのが、他社に真似された場合です。
自分のブランド名やサービス名によく似た名称が出てきたとしても、商標権がなければ、相手に使用停止を求める根拠が弱くなることがあります。
一方、商標権を取得していれば、登録された範囲については法律上の権利として主張できます。
つまり商標登録には、
他人の商標を侵害しないため
だけではなく、
自分のブランドを他人から守る
という役割もあります。
私は、むしろ逆だと思っています。
商標登録は、
有名になってから取るものではなく、有名にしていく前に取るもの
と考えた方が安全です。
理由は、
からです。
特に、
「この名前で今後も事業を続けたい」
と思った段階では、一度商標調査をしておくことをおすすめします。
もちろん、事業で使うすべての名称について商標登録しなければならないわけではありません。
例えば、
一時的にしか使わないキャンペーン名などについて、必ず商標登録する必要があるとは限りません。
大切なのは、
その名前が事業上どれだけ重要か
です。
例えば、
など、今後も継続して使い、認知を広げていきたい名称については、早めに商標登録を検討する価値があります。
私が実務上おすすめしているのは、
名前を決める
↓
商標調査をする
↓
問題がなさそうなら出願する
↓
本格的に広告・SNS・販売を始める
という順番です。
名前がまだ広まっていない段階なら、もし登録が難しそうでも別の名称に変更しやすいです。
しかし、
という段階まで進むと、変更コストは一気に高くなります。
だからこそ、早めの商標確認に意味があります。
商標登録をしなくても、事業を始めることはできます。
しかし、登録せずに長く使い続けることで、
といったリスクがあります。
特に怖いのは、
「自分が長く使ってきた名前だから大丈夫」
と思ってしまうことです。
商標の世界では、長く使っていることと、商標権を持っていることは別問題です。
長く育てたいブランド名・商品名・サービス名であれば、できるだけ早い段階で商標調査と出願を検討することをおすすめします。
遠山総合特許事務所では、
といったご相談にも対応しています。
現在の使用状況や事業内容を確認したうえで、必要な対応をご提案します。
執筆・監修:弁理士 遠山敬一
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