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カフェやレストラン、映画館、そして自動販売機。私たちの日常のあらゆる場面に登場する「コカ・コーラ」。あの赤と白のロゴ、そして手に馴染む独特なくびれのあるボトルの形は、世界中の誰もが知る象徴的なデザインですよね。
でも、その特徴的なボトルの形が、実は「権利」によって守られていることをご存知でしたか?
今回の記事では、コカ・コーラの象徴である「コンツアーボトル」を題材に、デザインを守るための権利「意匠権(いしょうけん)」について、誰にでも分かりやすく解説していきます。
「意匠権」と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんね。
すごくシンプルに言うと、「商品のデザインを守るための権利」のことです。
特許庁に「このデザインは、うちのオリジナルです!」と申請して登録されると、一定期間、他の会社が同じデザインや似たデザインの商品を製造・販売できなくなります。
意匠権のポイント
iPhoneの洗練された形や、自動車のカッコいいボディラインなど、優れたデザインはそれだけで商品の価値を大きく高めます。意匠権は、そうしたデザイナーの努力や企業の投資を守るための、とても大切な制度なのです。
さて、本題のコカ・コーラです。 コカ・コーラが誕生した19世紀末、その人気にあやかって多くの模倣品が出回りました。中には、名前やボトルの形を少しだけ変えた、紛らわしい商品もたくさんあったと言われています。
そこでコカ・コーラ社は、「暗闇で触っただけでコカ・コーラだとわかる」「割れた破片を見ただけでもそれとわかる」ような、独創的なボトルデザインを公募しました。
そして1915年に選ばれたのが、あの有名な「コンツアーボトル」です。カカオ豆の形をヒントにデザインされたという説もある、美しい曲線を持つボトルです。
コカ・コーラ社は、この独創的なボトルのデザインをすぐに意匠登録しました。これにより、他社はコンツアーボトルの形を真似することができなくなり、コカ・コーラは「本物」としてのブランドイメージを確立していくことになります。
意匠権という武器を手に入れたことで、コカ・コーラは模倣品を排除し、自社のブランド価値を飛躍的に高めることに成功したのです。
ここで一つ疑問が湧きます。
「意匠権の保護期間は最長25年なら、コンツアーボトルの権利はとっくに切れているのでは?」
その通りです。1915年に生まれたコンツアーボトルの意匠権は、もう何十年も前に存続期間が満了しています。では、なぜ今もあのボトルはコカ・コーラの象徴として守られているのでしょうか?
実は、コカ・コーラは意匠権だけでなく、別の権利も活用してデザインを守っています。それが「立体商標」です。
権利の種類 | 保護するもの | 保護期間 |
意匠権 | デザイン(形、模様、色彩など) | 出願から最長25年 |
商標権 | ブランドの目印(ロゴ、名前、音、形など) | 更新すれば半永久的 |
商標権は、通常、会社のロゴマークや商品名を保護するための権利です。しかし、商品の「形」そのものが、「〇〇社の製品だ!」と誰もがわかるほど有名になった場合、その形自体を「立体商標」として登録できるのです。
コンツアーボトルは、長年の販売実績によって「あの形=コカ・コーラ」という認識が世界中に浸透しました。そのため、ボトルの形状そのものがブランドの目印として認められ、立体商標として登録されています。
商標権は10年ごとに更新が可能で、更新し続ける限り半永久的に権利を維持できます。
つまりコカ・コーラは、
という、知的財産権を巧みに活用した戦略で、自社のデザインを守り続けているのです。
今回はコカ・コーラの「コンツアーボトル」を例に、意匠権について解説しました。
何気なく手に取っている商品にも、実はこうした知的な戦略が隠されています。コカ・コーラの事例は、優れたデザインがいかにビジネスにおいて強力な武器になるか、そしてその価値を守るための「権利」がいかに重要かを教えてくれます。
次にコカ・コーラを飲むときは、ぜひそのボトルの曲線美を眺めながら、100年以上にわたるデザインの歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
意匠権について相談する
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