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初めて特許出願を考えている中小企業の方から、
「まだ製品が完成していないのですが相談できますか?」
「どのくらい完成してから特許事務所へ行けばいいですか?」
「相談するときに何を持っていけばいいですか?」
と聞かれることがあります。
結論からいうと、完成品ができるまで待つ必要はありません。
むしろ、発明の内容がある程度具体化した段階で、早めに相談していただいた方がよいケースが多いです。
特に、
展示会、
Webサイト、
クラウドファンディング、
新商品の販売、
などを予定している場合には、公開する前に特許出願を検討することが非常に重要です。
今回は、横浜の中小企業が初めて特許出願するときに知っておいてほしいことを、実務の観点から紹介します。

初めて特許を考える方の中には、
「こんな程度の改良では特許にならないですよね」
と思っている方もいます。
しかし、特許になるかどうかは、発明を単独で見て決まるものではありません。
非常に重要なのが、それまでに存在していた技術との比較です。
特許では、新規性や進歩性などが審査されます。
簡単にいえば、
「これまでの技術と比べて、何が新しいのか」
「単なる当たり前の変更ではなく、どのような工夫があるのか」
というところが重要になります。特許庁も、新規性・進歩性を先行技術との関係で判断する審査基準を定めています。特許庁
そのため、初回相談では、
従来はこういうものだった
↓
しかし、こういう問題があった
↓
そこで、このように改良した
↓
その結果、こういう効果が得られた
という「発明のストーリー」が分かると非常に助かります。
発明というと、
「世の中にまったく存在しなかったものをゼロから作る」
ようなイメージを持たれるかもしれません。
しかし、実際の特許出願では、
既存の商品や装置に課題があり、
それを解決するために構造を変えた、
処理を加えた、
配置を工夫した、
という発明もたくさんあります。
ですから、
「ただの改良だから特許にならないだろう」
と自分で判断してしまう必要はありません。
既存技術との違いを整理したうえで、特許になる可能性を検討することが大切です。
これも初めて特許を出す方には知っておいてほしいポイントです。
試作品や完成品がなくても、特許出願は可能です。
もちろん、
「こんなものがあったらいいな」
という漠然としたアイデアだけでは十分ではありません。
しかし、
といった内容を技術的に説明できる段階になっていれば、出願を検討できます。
私としては、製品の完成を待つよりも、アイデアが具体化した段階で一度相談していただく方がよいと考えています。
製品開発の現場では、
「完成したら特許を考えよう」
と思っているうちに、
「来月展示会です」
「来週Webサイトを公開します」
「クラウドファンディングを開始します」
という話になってしまうことがあります。
そうすると、特許出願の準備に使える時間がほとんど残っていません。
ですから、
「まだ完成していないから相談するのは早い」ではなく、「完成前だからこそ一度相談する」
くらいでよいと思います。

特許出願では、新規性が非常に重要です。
原則として、特許出願前に世の中へ公開された発明は、新規性を失う可能性があります。
例えば、
などには注意が必要です。
日本には、一定の要件を満たせば、公開後1年以内の出願について「発明の新規性喪失の例外」の適用を受けられる制度があります。
ただし、私はできるだけこの制度を前提にしない方がよいと考えています。
新規性喪失の例外があるからといって、
「公開してから1年以内なら何でも大丈夫」
という意味ではありません。
例えば、公開後に第三者が先に同じ発明について出願したり、別の先行技術が公開されたりすれば問題になることがあります。
また、海外では日本と同じ新規性喪失の例外制度が使えるとは限りません。
特許庁も、可能な限り早く出願すること、海外出願を予定する場合には各国の制度に注意することを案内しています。特許庁
したがって、基本は、
相談 → 出願 → 公開
の順番です。
では、初めて特許事務所に相談するとき、何を用意すればよいのでしょうか。
立派な特許明細書を書く必要はありません。
むしろ、私が欲しいのは、
発明のストーリーと図面
です。
特に分かりやすいのは、
従来技術 → 問題点 → 改良 → 効果
という流れです。
例えば、
従来品では、この部分が壊れやすかった。
↓
原因を調べると、この部分に力が集中していた。
↓
そこで、このような構造に変更した。
↓
その結果、耐久性が向上した。
という説明です。
これが分かると、
どこが発明のポイントなのか
がかなり見えやすくなります。
図面もあると非常に助かります。
CADで作成した正式な図面でなくても構いません。
PowerPointで、
「ここが従来品」
「ここをこう変えた」
「ここが動く」
ということが分かる程度でも十分役に立ちます。
文章については、打ち合わせをしながらこちらで整理できます。
一方で図面については、実際にその技術を開発している方だからこそ、
「この図を見れば仕組みがすぐ分かる」
という図を作れることがあります。
ですから、初回相談では簡単なものでも構いませんので、図面を持ってきていただけると非常に助かります。

初回相談では、
「いつ販売しますか?」
だけでなく、
いつ公開する予定なのか
も重要です。
例えば、
というスケジュールが分かれば、
「では遅くともこの日までに出願しましょう」
と逆算できます。
特許の場合、販売開始日だけ見ていると遅いことがあります。
実際に重要なのは、技術内容を世の中へ公開する最初の日です。
特許は、取ること自体が目的ではありません。
私は初回相談で、
「この特許を何のために取りたいのですか?」
という点も確認したいと思っています。
目的としては、例えば、
などがあります。
特に物販では、
「特許出願中」などの表示を販売促進に使いたい
というケースもあります。
もちろん、出願しただけで特許権が発生するわけではありませんが、ビジネス上どのように活用したいのかによって、出願戦略も変わります。
例えば、
主力商品を長期的に守りたい会社と、
まず新商品について一定の知財ポジションを確保したい会社では、
特許出願に求めるものが違います。
そのため、
「特許になるか」だけでなく、「この会社にとって、この特許をどう使うか」
まで考えることが重要です。
将来、海外へ商品を販売する可能性がある場合には、最初の相談時に教えていただけると助かります。
日本で最初に特許出願し、その出願を基礎として優先権を主張しながら海外出願する場合、原則として最初の出願から12か月以内に海外出願を行う必要があります。
つまり、
「海外出願をするかどうかは数年後に考えればいい」
というわけではありません。
最初の日本出願後、比較的早い段階で判断する必要があります。
また、将来アメリカなどへ出願する可能性がある場合には、最初の日本出願の明細書を作成するときから、そのことを意識した方がよいケースがあります。
日本だけで権利化する場合と、
日本出願を基礎に米国・欧州・中国などへ展開する場合では、
明細書の内容について考慮すべき点が変わることがあります。
ですから、
「将来アメリカで販売する予定があります」
「海外メーカーへのライセンスも考えています」
といった計画がある場合は、最初から伝えていただいた方がよいでしょう。
横浜の中小企業であれば、知的財産に関する支援制度を利用できる場合があります。
例えば2026年度の横浜市には、「横浜知財みらい企業」認定企業を対象とした知的財産活動助成金があります。
対象企業については、特許等の出願料・登録料や弁理士等への手数料など、知的財産権取得費用の一部が助成対象となっています。なお、誰でも利用できる制度ではなく、対象は認定企業に限定されています。横浜市
制度は年度ごとに内容や募集条件が変わる可能性がありますので、出願を検討するときには、その時点で利用できる支援制度も確認するとよいでしょう。
まとめると、最初の相談では完璧な資料を作る必要はありません。
私としては、次の内容が分かればかなり話を進めやすくなります。
① 既存技術
今までどのような商品・技術があったのか。
② 問題点
従来技術の何に困っていたのか。
③ 今回の改良点
何をどう変えたのか。
④ 効果
その変更によって何が良くなったのか。
⑤ 図面
簡単なスケッチやPowerPointでも構いません。
⑥ 公開予定
Web、展示会、クラファン、販売などの日程。
⑦ 特許を取る目的
模倣防止、参入障壁、PR、ライセンスなど。
⑧ 海外展開の予定
海外販売や海外出願を検討しているか。
このくらいの情報があれば、初回相談としては十分です。
初めての特許出願では、
「完成してから弁理士に相談しよう」
と考えてしまいがちです。
しかし、実際には完成前の方が相談しやすいことも少なくありません。
特許では、
既存技術 → 問題 → 解決方法 → 効果
という流れを整理することが重要です。
そして、
アイデアが技術的に具体化したら、公開する前に相談する。
これが非常に大切です。
特に展示会、Webサイト、クラウドファンディングなどを予定している場合には、
「公開日が決まってから慌てて相談する」のではなく、その前の段階で一度相談しておく
ことをおすすめします。
遠山総合特許事務所では、
「まだ試作品が完成していない」
「この程度の改良でも特許になるのか知りたい」
「展示会の前に特許を出したい」
「既存技術との違いをどう整理すればいいか分からない」
「日本だけでなく海外出願も検討している」
といった段階からご相談いただけます。
発明の内容だけでなく、商品の公開時期、事業目的、海外展開なども含めて、どのような出願方法が適しているかを一緒に検討します。
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執筆・監修:弁理士 遠山敬一
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