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使われていない商標は取り消せる?「不使用取消審判」を横浜の特許事務所が分かりやすく解説!

「使いたいサービス名や商品名があったのに、すでに誰かに商標登録されていた…」

ビジネスを始めようとした時、こんな経験はありませんか?でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。もしその商標が登録されているだけで、実際には使われていない「休眠商標」だとしたら、その登録を取り消せる可能性があるのです。

それを実現するのが、今回ご紹介する「不使用取消審判(ふしようとりけししんぱん)」という制度です。

この記事では、商標の不使用取消審判について、制度の目的から手続きの流れ、請求された場合の対策まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。


■ 目次

  1. そもそも「不使用取消審判」とは?
  2. なぜこんな制度があるの?
  3. 誰が請求できるの?
  4. 審判請求の流れとポイント【請求する側】
  5. 請求されたらどうする?対抗策と注意点【請求された側】
  6. 審判の結果、どうなる?
  7. まとめ

1. そもそも「不使用取消審判」とは?

不使用取消審判とは、継続して3年以上、日本国内で使われていない登録商標の取り消しを求めることができる制度です(商標法第50条)。

特許庁に審判を請求し、「登録されているけど、使われていないですよね?」と問題提起をします。そして、商標を持っている側(商標権者)が「いや、ちゃんと使っていますよ」ということを証明できなければ、その商標登録が取り消される仕組みです。

例えるなら、「図書館でたくさんの本を借りたまま、誰も読まずに放置している人がいたら、他の読みたい人のために返却してもらう」というイメージに近いかもしれません。

2. なぜこんな制度があるの?

商標登録は、申請すれば永久に権利が保証されるわけではありません。商標制度の本来の目的は、事業者が使うマークを保護することで、事業者自身の信用を守り、消費者が商品やサービスを混同しないようにすることにあります。

しかし、使われていない商標が登録されたままだと、以下のような問題が起こります。

  • 使いたい人が使えない: 新しく事業を始める人が、その名称やロゴを使いたくても使えなくなってしまいます。
  • 産業の発達を阻害する: 新しい商品やサービスの誕生を妨げることにも繋がりかねません。

このような事態を防ぎ、本当に商標を使いたい人が使えるようにするために、不使用取消審判の制度が設けられているのです。

3. 誰が請求できるの?

この審判、実は誰でも請求することができます

「その商標を使いたい」という具体的な利害関係がなくても、「あの商標、使われていないみたいだから取り消してほしい」と考える人であれば、誰でも特許庁に請求することが可能です。これも、制度が公益的な目的を持っていることの表れです。

4. 審判請求の流れとポイント【請求する側】

実際に不使用取消審判を請求する場合、どのような流れになるのでしょうか。

請求の3つの条件

まず、請求の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす商標です。

  1. 継続して3年以上
  2. 日本国内で
  3. 登録されている指定商品・指定役務について、商標権者や使用を許可された人(ライセンシー)が使用していない

手続きの主な流れ

  1. 審判請求書の提出: 特許庁に対して「商標登録第〇〇号の登録を取り消す」という内容の審判請求書を提出します。この際、請求の理由を詳細に書く必要はなく、「3年以上使われていないから」という事実だけで十分です。
  2. 商標権者への通知: 特許庁から商標権者(請求された側)へ、「審判が請求されましたよ」という通知が送られます。
  3. 商標権者からの反論(答弁書の提出): 商標権者は、「私たちはこの商標をきちんと使っています」ということを証明するための答弁書と証拠を提出します。立証責任は、請求された商標権者側にあります。
  4. 審理: 特許庁の審判官が、提出された証拠などをもとに、商標が実際に使用されているかどうかを判断します。
  5. 審決: 審理の結果、「請求には理由がある(使用されていない)」または「請求には理由がない(使用されている)」という結論(審決)が出されます。

5. 請求されたらどうする?対抗策と注意点【請求された側】

もしあなたが不使用取消審判を請求されたら、どうすればよいのでしょうか。焦らず、適切に対応することが重要です。

「使用の事実」を証明する

最も重要な対抗策は、「指定商品・指定役務について、商標をきちんと使用していること」を証拠で証明することです。

【有効な証拠の例】

  • 商標が付いた商品の写真、パッケージ
  • 商標が掲載されたカタログ、パンフレット、広告
  • 商標が表示されたウェブサイトのスクリーンショット(日付が分かるもの)
  • 取引で交わした契約書、請求書、納品書など(商標と商品・サービスが明記されているもの)

注意点:「駆け込み使用」は認められない?

「審判を請求されそうだから、慌てて使い始めよう!」と考えるかもしれません。

しかし、審判請求の登録前3ヶ月以内に行われた使用(駆け込み使用)で、かつその使用が審判請求されることを知ってから行われたものである場合、その使用の事実は認められない可能性があります。アリバイ作りのような使用は通用しない、ということです。

使用していない「正当な理由」がある場合

病気での長期入院や、災害、法律による規制など、商標を使用できなかったことに「正当な理由」がある場合は、使用していなくても登録の取り消しを免れることがあります。ただし、単なる経営不振や資金不足といった理由は、一般的に正当な理由とは認められにくいので注意が必要です。

6. 審判の結果、どうなる?

審判の結果は、大きく分けて2つです。

  • 請求が認められた場合(請求成立) 商標権者が使用の事実を証明できなかった場合、その商標登録は取り消されます。これにより、誰でもその名称やロゴを商標登録できるようになります。
    • 一部の商品・サービスについてのみ使用を証明できた場合は、その部分を除いて取り消される「一部取消」となることもあります。
  • 請求が認められなかった場合(請求不成立) 商標権者が使用の事実を証明できた場合、請求は退けられ、商標登録は維持されます

7. まとめ

不使用取消審判は、使われていない商標を整理し、商標制度を健全に機能させるための重要な仕組みです。

  • 使いたい商標が登録されていても、諦めずに調査してみる価値がある。
  • 商標を登録した側は、権利を維持するためにきちんと使用し、その証拠を残しておくことが大切。

もしあなたが「使いたい商標が使われていないかもしれない」と感じたり、逆に「自分の商標が審判を請求された」という場合には、まずは弁理士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事が、不使用取消審判への理解を深める一助となれば幸いです。

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