ブログ

立体商標と意匠の違いとは?横浜の特許事務所がヤクルトの容器を例に徹底解説!

「この形、見ただけであの商品だってわかる!」

皆さんの周りにも、そんな印象的な形の商品はありませんか?例えば、ヤクルトのくびれた容器や、コカ・コーラの瓶、不二家のペコちゃん人形など。これらの「形」は、実は法律で権利として保護されていることがあります。

その保護制度が、立体商標意匠です。

どちらも商品の「形(デザイン)」を守る制度ですが、その目的や保護される期間、登録の条件は大きく異なります。自社の商品のデザインを守りたいと考えたとき、どちらの制度を利用すれば良いか迷ってしまう方も少なくありません。

そこで今回は、立体商標と意匠の根本的な違いから、それぞれの特徴、使い分けまで、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。

まず結論!一番大きな違いは「何を守るか」という目的

二つの権利の最も大きな違い、それは権利の目的です。

  • 立体商標:その「形」が持つブランド力や信用を守る(これは「どこの会社の商品か」を示す目印
  • 意匠:その「形」が持つデザインとしての美しさや新しさを守る(デザインそのもの

一言でいうと、立体商標は「ブランドの顔」を守り、意匠は「デザインの創作性」を守る権利、とイメージすると分かりやすいでしょう。


「立体商標」とは?―ブランドの顔を守る権利

立体商標は、商品の容器や形そのものが「自社の商品・サービスである」ことを示す識別標識(目印)として機能する場合に認められる商標権の一種です。

ポイント解説
目的商品の出所表示機能。その形を見ただけで「あの会社の商品だ」と分かる目印としての役割を守ります。
保護対象商品の形状、容器、店舗の形、看板(ペコちゃん人形など)
登録要件特別な顕著性(識別力) が必要です。つまり、「長年の使用によって、その形が特定の企業の商品として消費者に広く認識されている」ことが重要になります。斬新なデザインである必要はありません。
権利期間10年(ただし、更新すれば半永久的に維持可能)
具体例ヤクルトの容器、コカ・コーラの瓶、ケンタッキーのカーネル・サンダース人形、ホンダのスーパーカブ

ヤクルトの容器は、まさに立体商標の代表例です。あの独特なくびれた形は、ロゴや商品名がなくても、誰もが「ヤクルトだ」と認識できますよね。このように、形そのものがブランドの顔となっている場合に、その模倣を防ぐのが立体商標の役割です。

「意匠」とは?―デザインの創作性を守る権利

一方、意匠権は、新しく創作された工業製品のデザイン(物品の形状、模様、色彩など)を保護する権利です。

ポイント解説
目的デザインの保護と活用。新しく創作された優れたデザインを保護し、デザイン創作を奨励することが目的です。
保護対象物品の形状、模様、色彩のデザイン。Webサイトの画面デザインや建築物も対象になります。
登録要件新規性(世の中にまだ出ていない新しいデザインか)や創作非容易性(簡単に思いつけないデザインか)などが問われます。長く使われている必要はありません。
権利期間出願日から最長25年(更新不可)
具体例新型自動車のボディライン、スマートフォンのデザイン、特徴的な模様の食器、文房具の形

発売されたばかりのスマートフォンのデザインや、斬新なフォルムの椅子などを思い浮かべてみてください。これらは、その機能だけでなく、デザインそのものに価値があります。他社に安易に真似されないように、その創作的なデザインを一定期間独占できるのが意匠権です。


【一覧表】立体商標と意匠の違いを整理

ここまでの内容を表で比較してみましょう。

項目立体商標意匠権
保護目的業務上の信用(ブランドの顔)デザインの創作性・美観
保護対象商品・容器の形状、看板など(目印となるもの)物品の形状・模様・色彩など(デザインそのもの)
登録要件特別な顕著性(誰のものか分かるか)新規性・創作非容易性(新しいか・真似しにくいか)
権利期間10年(更新により半永久的出願日から最長25年(更新不可)
権利の効力同一・類似の「商標」の使用を排除同一・類似の「デザイン」の実施(製造・販売等)を排除

両方で保護する最強の戦略も!

「じゃあ、うちの商品はどっちで守ればいいの?」と迷う方もいるでしょう。実は、一つの商品を両方の権利で保護するという戦略もあります。

代表的な例が、コカ・コーラの瓶です。

  1. 意匠登録で保護:発売当初、その独創的なデザインは「意匠」として保護されました。これにより、他社は類似した形の瓶を製造・販売できなくなります。
  2. 立体商標で保護:意匠権の保護期間中(または満了後も)、その瓶の形はコカ・コーラ社の象徴として世界中に広く認知されました。その結果、「形=ブランドの顔」となり、立体商標としても登録されたのです。

意匠権には期限がありますが、立体商標は更新し続ければ半永久的に権利を維持できます。このように、まずは意匠権で新しいデザインを保護し、市場でその形の認知度が高まった段階で立体商標の取得を目指す、という二段構えの知財戦略は非常に強力です。

まとめ

最後に、今回のポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 立体商標は、その形が誰の商品かを示す「ブランドの顔(目印)」を守る権利。更新すれば半永久的に保護される。
  • 意匠は、新しく創作された「デザインそのもの」を守る権利。保護期間は最長25年。
  • 商品のライフサイクルに合わせて、両方の権利を取得する戦略も有効。

自社の大切な商品の「形」を守るために、どちらの制度が適しているのか、または両方で守るべきなのか。このブログが、あなたの知財戦略を考える上での一助となれば幸いです。

商標と意匠の情報をゲット!

友だち追加

関連記事

  1. ニックネームは商標登録できる?気になる疑問を徹底解説!
  2. 商標登録はしたもん勝ち?~知っておくべき先願主義と注意点~
  3. マドプロ国際登録とは?海外で商標を守るための賢い方法を分かりやす…
  4. その事業、商標登録なしで大丈夫?事業を守り育てるためのメリット・…
  5. 女子高生は伊藤ハムの登録商標だった!? あの噂の真相を徹底解説!…
  6. そのキャラクター名、大丈夫?キャラクター名は商標登録できるのかを…
  7. 意匠はなぜ出願公開されないの?秘密主義の裏側を解説
  8. 【商標の早期審査】申請から登録までどれくらい?期間や対象要件を横…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP